ヒト眼の水晶体(レンズ)を構成するのがクリスタリン蛋白質(以下、クリスタリン)です。クリスタリンはシャペロン機能と呼ばれる蛋白質の透明性を維持する機能をもち、それを生かして水晶体の透明性を長期にわたり維持します。しかし、加齢に応じてD化、酸化、脱アミド化、異性化など様々な修飾がクリスタリン内部アミノ酸に生じることで、構造が乱れ、機能が低下します。

 我々は、加齢後ヒト水晶体内で最も頻度の高い修飾であるアスパラギン、グルタミン残基のアスパラギン酸、グルタミン酸残基への脱アミド化修飾に着目し、修飾とクリスタリン異常凝集との関係を調査しています。また最近では脱アミド化の際に副次的にD化が生じることが判明し、その速度も極めて早いことがわかりました。これらを利用して高速加齢モデル蛋白質を作出し、D化促進要因やD化抑制因子を探索しています。

 以上のように、加齢性白内障を加齢性疾患モデルとして定め、蛋白質中アミノ酸の各種修飾を抑制する化合物を見出し、加齢現象を分子レベルで抑制するべく、クリスタリンを用いた研究を進めています。

上図)加齢性白内障の発症機構

参考文献

水晶体構成蛋白質中におけるアミノ酸の自発的化学修飾が引き起こす白内障発症機構に関する研究

高田 匠
日本白内障学会誌 30, 7-12, (2018)

Site-specific rapid deamidation and isomerization in human lens αA-crystallin in vitro.

Takata T, Ha S, Koide T and Fujii N.
Protein science. 4, 955-965 (2020).

Deamidation destabilizes and triggers aggregation of a lens protein, βA3-crystallin.

Takata T, Oxford J, Demeler B, and Lampi K.
Protein science. 17, 1565-1575 (2008).